(1)海域の環境保全・創造方針
大阪湾は本来、生物種が豊富な海域であり、その大阪湾を取り戻すため、
?生息環境の多様性が保たれている海域においては、新たな利用に際して、それを保全、
生息環境の多様性が求められる海域においては、新たな開発・利用に際して、人工島の形状の配慮、干潟、浅場や植生可能な傾斜護岸の造成など積極的に多様性のある環境を創造。
?富栄養化の進行によって特定の種が優占する海域においては、富栄養化を抑制する方向で水質を改善。
?特定の種しか棲めない程に底質が悪化している海域においては、各種施策によって底質を改善。
を進めることにより、生物多様性の維持・回復を図る必要がある。(Fig−5)
Fig−5.Neasure to Creation of Environment in Sea Area
これらを踏まえたゾーン区分を行い、エコトーン(移行帯)を考慮しつつ、各海域の特性に応じた環境保全・創造を考えていく必要がある。
・西部海域は、海水交換機能の保存とともに、良好な自然環境の保全を基調として考え、浅場の保全・拡大を図る。
・東部海域では、利用との関係に配慮しつつ、多様な生息環境の回復・創造、水質・底質の改善を図る。
・湾奥部の環境が湾全体の環境を左右する状況が見られることから、湾奥部の環境創造に取り組むことが肝要。湾奥部は、良好な汽水域として生物多様性に寄与すべき水域であり、流入負荷の一層の削減、既開発により生じた変化の修復、新たな人工島開発に伴う積極的な環境創造、水質・底質の改善などにより、多様な生物種にとっての生命のインキュベータとしての役割を回復する。
(2)陸域の環第保全・創造方針
大阪湾の生物多様性の維持・回復を図ることは、沿岸陸域の人間に対しても快適な環境を提供することになるが、さらに、?水際線へのアクセシビリティの向上、?海辺のネットワークの構築、?魅力的な水際空間の形成、?景観形成、?地域環境の改善により、パブリックアクセスが確保されアメニティ豊かな環境の創出を図ることが必要である。(Fig−6)
Fig−6.Measure to Creation of Environment in Water−front Area
6. おわりに
大阪湾港湾環境計画の策定に向け、現在も検討作業を進めている。大阪湾全体の環境保全・創造を見据えた中で、湾内の港湾が取り組むべき施策等をとりまとめていきたいと考えている。
大阪湾の環境保全・創造のためには、市民や関係行政機関のコンセンサス形成、研究・推進に際しての協力体制の確立等、実現に向けて取り組むべき諸課題も多々あるところである。
大阪湾の環境に深く関わりを持つ港湾の立場から、各港湾管理者の方々と共通の環境保全・創造方針を持ち、各方面と協力を図りつつ、その実現に努めて行きたいと考えているところである。
参考文献
1)環境と共生する港湾〈エコポート〉新たな港湾環境政策。平成6年。運輸省港湾局
2)大交流時代を支える安全で活力ある大阪湾−大阪湾港湾計画の基本構想一、平成7年、運輸省港湾局。運輸省第三港湾建設局
3)エコポートモデル事業計画調査報告書(堺泉北港)、平成7年、運輸省第三港湾建設局、大阪府
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